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【中医協】在宅自己注射の対象薬にアナキンラ追加へ|第654回総会を解説
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【中医協】在宅自己注射の対象薬にアナキンラ追加へ|第654回総会を解説

スチル病治療薬アナキンラは自宅での自己注射が可能に。追加の理由と医療機関の実務ポイントを整理します

2026年(令和8年)8月5日の中医協総会(第654回)で、「在宅自己注射について」が議題になりました。この議題では、6月に薬事承認された新しい皮下注射薬2剤の、保険上の扱いが示されています。2剤の扱いは同じではないため、処方や指導を担う医療機関は違いを正確に把握する必要があります。本号では、資料「総-8」と参考資料をもとに、2剤の扱いの違いと判断の根拠を整理します。

結論として、2剤のうちアナキンラだけが在宅自己注射の対象に加わる案が示されました。アナキンラ(キネレット)は、「保険医が投与することができる注射薬」と「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤」の両方に追加される案です。イサツキシマブ(サークリサ皮下注)は、「保険医が投与することができる注射薬」にのみ追加される案です。2剤の扱いは、中医協が定めた「運用基準」と、関連学会からの要望書にもとづいて判断されています。

用語の確認

  • 保険医が投与することができる注射薬:医師が患者に渡したり、処方箋を交付したりできる注射薬です。保険診療のルール(療担規則)で、厚生労働大臣が定めた注射薬に限られています。

  • 在宅自己注射指導管理料:患者が自宅で自分(または家族)で注射できるよう、医師が指導・管理を行った場合に算定する診療報酬です。対象となる注射薬は告示(別表第九)で決められています。

1. アナキンラ:在宅自己注射の対象に加わる案

アナキンラは、毎日の皮下注射が必要なスチル病の治療薬であり、自宅での自己注射を前提に追加が提案されました。以下では、薬剤の概要、学会が要望した理由、追加案での位置づけの順に説明します。

薬剤の概要:アナキンラは、全身型若年性特発性関節炎と成人発症スチル病に使う皮下注射薬です。販売名は「キネレット皮下注100mgシリンジ」で、2026年6月19日に薬事承認されました。投与量は、体重50kg以上なら1回100mg、50kg未満なら体重1kgあたり2mgで、いずれも1日1回投与します。16歳未満の患者で効果が不十分な場合は、体重1kgあたり1回最大4mgまで増量できます。対象は成人と、生後8か月以上かつ体重10kg以上の小児です。作用は、炎症を引き起こす物質「インターロイキン-1(IL-1)」の働きを妨げることで炎症を抑えるものです。

学会が要望した理由:日本リウマチ学会と日本小児リウマチ学会は、早期から使える生物学的製剤が必要だとして追加を要望しました。2つの病気はいずれも指定難病で、長く治療を続ける必要があります。現在の主な治療はステロイド(グルココルチコイド)ですが、長期使用により、小児では成長障害や代謝異常などの副作用が問題になります。国内で承認済みの生物学的製剤(トシリズマブ、カナキヌマブ)は、ステロイドで効果が不十分な場合の選択肢にとどまります。海外の提言・ガイドラインでは、スチル病と診断が確定した段階で、IL-1阻害剤(を含む生物学的製剤)を第一選択薬として使うことが推奨されています。海外では30以上の国・地域で承認されており、ほとんどの患者が指導を受けたうえで自宅で自己注射をしています。国内の第3相試験(15名)でも、患者や保護者が1日1回の自己注射を行い、自己注射による不具合は報告されませんでした。

追加案での位置づけ:案が了承されれば、アナキンラは在宅自己注射指導管理料を算定して、自宅での自己注射を指導できる薬剤になります。一方、必要な在宅療養指導管理材料加算は、資料で「なし」とされています。自己注射の導入にあたっては、既存の通知(「在宅自己注射を実施するに当たっての留意事項」)が示す次の4点を守る必要があります。

  • 指導管理は、対象疾患の診療を日常的に行い、十分な経験を持つ医師が行う

  • 導入前に、入院または週2回若しくは3回以上の外来・往診・訪問診療で十分に教育する

  • かかりつけ医と別の医師が指導する場合は、緊急時の対応を連携しておく

  • 使用済みの注射器などの廃棄方法も指導する

あわせて学会要望書は、感染症の徴候など副作用が疑われる場合にすぐ医療機関へ連絡するよう、患者に指導するとしています。

2. イサツキシマブ:投与できる注射薬にのみ加わる案

イサツキシマブは、在宅で医療従事者が投与する使い方を想定した抗がん剤であり、在宅自己注射指導管理料の対象への追加は提案されていません。以下では、アナキンラと同じく、薬剤の概要、学会が要望した理由、追加案での位置づけの順に説明します。

薬剤の概要:イサツキシマブは、多発性骨髄腫に使う皮下注射薬です。販売名は「サークリサ皮下注1400mg」で、2026年6月19日に薬事承認されました。他の抗がん剤と併用し、1回1400mgを1週間間隔、2週間間隔(さらに4週間間隔)の順で皮下投与します。点滴製剤を使用中の患者は、治療の状況に応じて本剤へ切り替えられます。作用は、がん細胞の表面にある「CD38」という目印に結合し、免疫の力などでがん細胞を攻撃するものです。

学会が要望した理由:日本血液学会は、免疫機能が低下した高齢患者の通院負担と感染リスクを減らすために要望しました。多発性骨髄腫は高齢者に多く、長期の治療が必要な病気です。本剤は「オンボディインジェクター(OBI)」という体に貼り付けて使う投与器具を採用しており、医療従事者の手技に左右されずに投与できます。再発・難治性の患者を対象とした国際共同第III相試験では、医師が可能と判断した場合に、訪問看護師による在宅投与が認められていました。学会は、在宅での抗がん剤注射の指導管理(在宅腫瘍化学療法注射指導管理料)の対象にすることを求めています。

追加案での位置づけ:案では、イサツキシマブは保険医が投与することができる注射薬に追加されますが、在宅自己注射指導管理料の対象には含まれません。学会要望も、患者自身による自己注射ではなく、在宅での医療従事者による投与を想定しています。必要な在宅療養指導管理材料加算も、資料で「なし」とされています。学会要望書では、在宅で投与する場合に、本剤とOBIの管理方法、副作用発現時の連絡、使用済み器具の廃棄方法を指導することが想定されています。

3. 判断の根拠:運用基準と学会要望書

2剤の扱いを決めた物差しは、中医協が2023年(令和5年)8月に改正を承認した「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に係る運用基準」です。この基準は、対象薬剤の要件と、追加する時期を定めています。また、保険医が投与することができる注射薬の追加にも準用されます。

対象薬剤の要件:運用基準では、補充療法等の頻回投与または発作時の緊急投与が必要な注射薬で、次の3つをすべて満たすことが求められます。

  • 関連学会のガイドラインなどで、在宅自己注射の診療上の必要性が確認されている

  • 承認された用法・用量で、維持期の投与間隔がおおむね4週間以内である

  • 学会から、必要事項を記載した要望書が提出されている

要望書には、自己注射の安全性、対象患者の要件、使用上の留意点、頻回投与や長期治療が必要な理由を記載する必要があります。在宅療養指導管理材料加算を要望する場合は、加算の名称と理由も記載します。補充療法や発作時の緊急投与以外の薬剤では、要望した学会以外の学会の意見も確認します。アナキンラについては、日本リウマチ学会と日本小児リウマチ学会の2学会から要望書が提出されています。

追加の時期:運用基準では、投与間隔に応じて追加の時期を分けています。14日未満の間隔で注射する薬は、要件を満たせば、原則として薬価収載の時期にあわせて追加を検討します。14日以上の間隔で注射する薬は、14日を超える投薬が可能になった段階で、薬価収載の時期にあわせて検討します。新医薬品は、原則として薬価収載の翌月から1年間、投薬期間が14日に制限されるためです。アナキンラは1日1回投与のため、前者に当たります。

まとめ:アナキンラは自己注射可、イサツキシマブは投与可のみ

第654回中医協総会では、6月に承認された皮下注射薬2剤の保険上の扱いが案として示されました。アナキンラは、保険医が投与することができる注射薬と在宅自己注射指導管理料の対象薬剤の両方に追加される案です。イサツキシマブは、保険医が投与することができる注射薬にのみ追加される案です。2剤の扱いは、中医協の運用基準と関連学会の要望書にもとづいて判断されています。アナキンラの自己注射を導入する医療機関は、十分な教育期間の確保と廃棄方法の指導を含む安全管理を準備しておきましょう。


参考資料:中央社会保険医療協議会 総会(第654回)資料「総-8」「総-8参考1-1」「総-8参考1-2」「総-8参考2」「総-8参考3」(令和8年8月5日)

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