令和8年度診療報酬改定では、入院患者の口腔管理を充実させるため、医科歯科連携に関する新たな評価が設けられました。歯科診療を行っていない保険医療機関(病院・有床診療所)に入院中の患者に対して、連携する歯科医療機関が歯科訪問診療を行った場合に算定できる「医科連携訪問加算」(500点)が新設されています。本稿では、この加算の背景、算定要件、施設基準、および注意点を解説します。
医科連携訪問加算の要点は、次の3つです。第一に、歯科診療を行っていない医療機関からの依頼に基づき入院患者に歯科訪問診療を行った場合、歯科訪問診療料に500点が加算されます。第二に、対象患者は、口腔状態の課題により医科の治療に支障が生じている入院患者に限定されます。第三に、周術期等口腔機能管理料や回復期等口腔機能管理料との併算定はできません。
新設の背景:入院中の医科歯科連携が進んでいない
医科連携訪問加算が新設された背景には、入院患者に対する医科歯科連携の停滞があります。令和6年度改定で導入された「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」では、急性期病棟の入院患者に対して口腔状態の評価を含む多職種連携の取組が行われています。しかし、医科の入院患者において、歯科受診が必要であるにもかかわらず、連携はあまり進んでいません。NDBデータによれば、退院後の歯科受診率は加算算定の有無にかかわらず約9%(算定あり8.8%、算定なし8.7%)にとどまっています。
連携が進まない要因のひとつは、歯科診療を行っていない医療機関における体制の不足です。歯科のない医療機関では、入院中の患者に口腔の課題が見つかっても、歯科医療機関に診療を依頼する仕組みが十分に整備されていませんでした。こうした課題を解消するために、入院中の口腔管理を歯科訪問診療で担う場合の評価として、医科連携訪問加算が新設されました。
算定要件:歯科診療を行っていない医療機関からの依頼が前提
医科連携訪問加算を算定するには、歯科診療以外の診療のみを行う保険医療機関からの依頼が必要です。つまり、歯科診療を行っていない医療機関が、連携する歯科医療機関に対して入院患者の口腔管理を依頼することが算定の前提となります。
対象患者は、口腔状態に係る課題のために医科における治療上の課題が生じている入院中の患者です。たとえば、口腔衛生状態の不良や咬合不良により、手術や全身管理に影響が出ているケースが該当します。単に口腔に問題があるだけではなく、その問題が医科の治療に支障をきたしていることが条件です。
算定にあたっては、連携する歯科医療機関の歯科医師が当該病院に出向き、歯科訪問診療を実施します。この歯科訪問診療料の所定点数に、医科連携訪問加算として500点が上乗せされます。
施設基準:連携体制の構築と情報共有が必要
医科連携訪問加算を届け出るには、2つの施設基準を満たす必要があります。
1つ目の基準は、連携体制の構築です。歯科医療機関は、歯科のない医療機関に入院中の口腔状態に課題を抱える患者について、当該医療機関の依頼に基づき対応する連携体制を構築していなければなりません。
2つ目の基準は、情報共有の体制整備です。連携する医療機関の依頼に円滑に対応するために、必要な情報を共有する仕組みが求められます。たとえば、患者の診療情報や口腔状態に関する情報を、依頼元の医療機関と歯科医療機関の間で適切にやり取りできる体制を整える必要があります。
注意点:周術期等・回復期等口腔機能管理との併算定はできない
医科連携訪問加算には、併算定できない項目があります。具体的には、周術期等口腔機能管理計画策定料、周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)~(Ⅳ)、回復期等口腔機能管理計画策定料、および回復期等口腔機能管理料と同時に算定することはできません。
この制限が設けられた理由は、評価の重複を防ぐためです。周術期等口腔機能管理や回復期等口腔機能管理は、手術や回復期における口腔管理を包括的に評価するものです。医科連携訪問加算は、これらの管理の対象にならない入院患者に対して、新たに歯科訪問診療を促進する位置づけとなります。
したがって、周術期や回復期の口腔機能管理をすでに行っている患者には、医科連携訪問加算は算定できません。対象となるのは、こうした既存の管理体系に該当しないものの、口腔の課題が医科の治療に影響している入院患者です。
まとめ
令和8年度改定で新設された医科連携訪問加算(500点)は、歯科診療を行っていない医療機関の入院患者に対する口腔管理を推進するための評価です。算定には、歯科診療以外の診療のみを行う保険医療機関からの依頼と、口腔状態の課題が医科の治療に影響していることが求められます。施設基準として、連携体制の構築と情報共有の整備が必要です。周術期等・回復期等口腔機能管理との併算定はできないため、対象患者の整理が重要となります。歯科医療機関にとっては、地域の医療機関との連携体制を構築することが、この加算を活用するための第一歩です。










