中央社会保険医療協議会総会(第640回)において、令和8年度診療報酬改定に係る「これまでの議論の整理(案)」が示されました。高齢化や高額医薬品の開発等により医療費の増大が見込まれる中、国民皆保険を維持するためには、医療資源を効率的・重点的に配分し、制度の安定性・持続可能性を高める取り組みが不可欠です。
本記事では、「Ⅳ 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」の内容を解説します。今回の改定では、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、費用対効果評価制度の活用、市場実勢価格を踏まえた適正な評価、電子処方箋を活用した医薬品適正使用の推進、外来医療の機能分化と連携、医療DX・ICT連携の活用という6つの柱が示されています。
後発医薬品・バイオ後続品の使用促進
後発医薬品・バイオ後続品の使用促進として、処方・調剤体制の見直しと長期収載品の患者負担見直しが主な対応策として示されています。
後発医薬品については、使用促進等の観点から処方等に係る評価体系の見直しが行われます。後発医薬品の使用が定着しつつある一方、主に後発医薬品において不安定な供給が発生しており、これにより医療機関及び薬局において追加的な業務が生じています。この状況を踏まえ、医薬品の安定供給に資する体制について新たな評価が設けられます。
バイオ後続品については、使用促進体制が整備されている医療機関をより適切に評価するため、バイオ後続品使用体制加算の要件が見直されます。薬局においても、バイオ後続品の調剤体制の整備及び患者への説明について新たな評価が行われます。
長期収載品の選定療養については、後発医薬品の供給状況や患者負担の変化に配慮しつつ、創薬イノベーションの推進や後発医薬品の更なる使用促進に向けて、患者負担の見直しが行われます。なお、中医協総会(第640回)資料「総-2選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集の結果への対応等について」では、患者負担の水準を価格差の4分の1相当から2分の1相当へと引き上げる方向性が示されています。
費用対効果評価制度の活用
費用対効果評価制度については、費用対効果評価専門部会の議論を踏まえて取りまとめられた「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子」に基づき対応が行われます。
なお、中医協総会(第640回)資料「総-1令和8年度診療報酬改定の改定率等について」では、医療保険制度の運営の中で費用対効果評価を推進する観点から、同制度の更なる活用が図られることが示されています。具体的には、既存の比較対照技術と比べて追加的な有用性がなく、単に費用増加となる医薬品に係る価格調整範囲の拡大が検討されています。適切な評価手法の確立や実施体制の強化を進める中で、対象品目や価格調整の範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映を含めた医療現場での普及など、同制度の発展に向けた見直しが進められます。
市場実勢価格を踏まえた適正な評価
市場実勢価格を踏まえた適正な評価では、薬価制度改革と検体検査実施料の見直しが行われます。
医薬品・医療機器については、薬価専門部会の議論を踏まえて取りまとめられた「令和8年度薬価制度改革の骨子」及び保険医療材料専門部会の議論を踏まえて取りまとめられた「令和8年度保険医療材料制度改革の骨子」に基づき対応が行われます。
検体検査については、衛生検査所検査料金調査による実勢価格等を踏まえ、検体検査の実施料等について評価が見直されます。
電子処方箋の活用と医薬品適正使用の推進
電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取り組みによる医薬品適正使用の推進として、重複投薬・ポリファーマシー対策、医師と薬剤師の連携強化、処方の適正化、電子処方箋システムの利活用という4つの対応が示されています。
重複投薬・ポリファーマシー対策では、薬剤情報連携の強化が図られます。処方変更理由や服薬状況等の薬剤情報が適切に共有されないことにより、ポリファーマシー対策が途切れてしまうことを防止する観点から、病院薬剤師による施設間の薬剤情報連携が促進されるよう、薬剤総合評価調整加算の要件及び評価が見直されます。向精神薬については、情報通信機器を用いた診療において処方する場合には、電子処方箋管理サービスによる重複投薬等チェックを行うことが要件となります。情報通信機器を用いた医学管理において重複投薬等チェックを行う際に電子処方箋を発行する場合については、新たな評価が設けられます。残薬対策として、保険薬局において患家に残薬があることを確認した場合に、保険医療機関と保険薬局が連携して円滑に処方内容を調整できるよう、処方箋様式が見直されます。長期処方及びリフィル処方箋による処方を適切に推進する観点から、計画的な医学管理を継続して行うこと等を評価する医学管理料の要件見直しとともに、処方箋様式の見直しが行われます。
医師と薬剤師の連携強化では、病棟薬剤業務の実績評価が見直されます。ポリファーマシー対策や施設間の薬剤情報連携、転院・退院時の服薬指導等に資する薬学的介入の実績を適切に評価する観点から、病棟薬剤業務実施加算について、薬剤総合評価調整や退院時薬剤情報管理指導の実績に応じた評価に見直されます。在宅医療におけるポリファーマシー対策及び残薬対策を推進する観点から、医師と薬剤師が同時訪問することについて新たな評価が設けられます。
処方の適正化では、保険給付の適正化の観点から、栄養保持を目的とした医薬品の保険給付の要件が見直されます。
外来医療の機能分化と連携
外来医療の機能分化と連携については、「Ⅱ-4」において詳細が示されています。この項目は効率化・適正化の観点からも重要な位置づけとなっており、かかりつけ医機能の評価や紹介受診重点医療機関の評価などを通じて、医療資源の効率的な活用が図られます。
医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価
医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価については、「Ⅲ-3」において詳細が示されています。電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進や、オンライン診療の推進などを通じて、医療の質向上と効率化の両立が目指されています。
OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方について
令和8年度診療報酬改定の基本方針においては、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直しも含まれています。ただし、この項目については中央社会保険医療協議会において議論が行われていないため、「これまでの議論の整理」には含まれていません。
社会保障審議会医療保険部会における議論や、令和8年度予算案に係る「大臣折衝事項」(令和7年12月24日)も踏まえ、今後、必要に応じて中央社会保険医療協議会においても議論される予定です。なお、「大臣折衝事項」では、OTC医薬品の対応する症状に適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品のうち、他の被保険者の保険料負担により給付する必要性が低いと考えられるものについて、患者の状況や負担能力に配慮しつつ、別途の保険外負担(特別の料金)を求める新たな仕組みを創設し、令和8年度中(令和9年3月)に実施するとされています。
まとめ
令和8年度診療報酬改定における効率化・適正化の方向性は、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、費用対効果評価制度の活用、市場実勢価格を踏まえた適正な評価、電子処方箋を活用した医薬品適正使用の推進、外来医療の機能分化と連携、医療DX・ICT連携の活用という6つの柱で構成されています。これらの取り組みを通じて、医療サービスの維持・向上と効率化・適正化の両立が図られます。医療関係者には、これらの改定内容を理解し、適切な対応を準備することが求められます。










