令和8年度診療報酬改定では、地域包括診療加算・地域包括診療料について大幅な見直しが行われます。今回の改定は、対象疾患を有する要介護高齢者等への継続的かつ全人的な医療の推進と、適切な服薬管理の実施を推進する観点から実施されるものです。この記事では、個別改定項目「Ⅱ-3 かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価 ④地域包括診療加算等の見直し」について、実務に直結する改定内容を解説します。
今回の見直しは、大きく6つのポイントに整理できます。第1に、対象患者が「6疾病のうち2つ以上」から「慢性疾患1つ+要介護」にも拡大されます。第2に、認知症地域包括診療加算・料が地域包括診療加算・料に統合されます。第3に、連携薬局の24時間対応要件が一定条件のもとで緩和されます。第4に、認知症患者の診断後支援に係る取組の案内が望ましい旨、明記されます。第5に、薬剤適正使用連携加算の対象が外来通院患者にも拡大されます。第6に、外来データ提出加算(10点)が新設されるとともに、医療資源の少ない地域における医師配置要件が緩和されます。
1. 対象患者の拡大――慢性疾患1つ+要介護でも算定可能に
地域包括診療加算等の対象患者が拡大され、従来の「6疾病のうち2つ以上」に加え、新たな患者類型が追加されます。
従来、地域包括診療加算等の対象患者は、脂質異常症・高血圧症・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る)・認知症の6疾病のうち、2つ以上(疑いを除く)を有する患者に限られていました。今回の改定では、この要件に加えて、脂質異常症・高血圧症・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病のいずれか1つの疾患を有し、かつ、介護給付または予防給付を受けている要介護被保険者等である患者も、新たに対象となります。
この拡大により、たとえば高血圧症のみを有する要介護認定患者であっても、地域包括診療加算等を算定できるようになります。慢性疾患を抱える要介護高齢者に対して、かかりつけ医による継続的かつ全人的な医療提供を促進する狙いがあります。
なお、対象患者の拡大に伴い、算定要件上の記載も整理されています。改定後の算定要件では、「認知症を有する患者等」と「その他の慢性疾患等を有する患者」の2類型に分けて規定されます。
「認知症を有する患者等」とは、以下の3要件をすべて満たす患者です。第1に、認知症を有するか、または要介護被保険者等であること。第2に、認知症以外の1以上の疾病(疑いを除く)を有すること。第3に、同月に1処方につき5種類を超える内服薬の投薬、および1処方につき抗うつ薬・抗精神病薬・抗不安薬・睡眠薬を合わせて3種類を超える投薬のいずれも受けていないこと。つまり、認知症のみで他に疾病がない患者や、多剤投薬に該当する患者は対象外となります。
「その他の慢性疾患等を有する患者」とは、6疾病のうち2つ以上(疑いを除く)を有する患者、または脂質異常症・高血圧症・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病のいずれかを有し、かつ要介護被保険者等である患者です。
2. 認知症地域包括診療加算・料の統合と点数体系の再編
認知症地域包括診療加算および認知症地域包括診療料が廃止され、地域包括診療加算および地域包括診療料に統合されます。
従来、認知症患者に対しては、地域包括診療加算等とは別に「認知症地域包括診療加算」(加算1:38点、加算2:31点)および「認知症地域包括診療料」(料1:1,681点、料2:1,613点)が設けられていました。今回の改定では、簡素化の観点から、これらを地域包括診療加算・料に統合した評価体系に見直されます。
統合後の地域包括診療加算は、患者の類型に応じた2段階の点数が設定されます。具体的には、地域包括診療加算1では「認知症を有する患者等」が38点、「その他の慢性疾患等を有する患者」が28点となります。地域包括診療加算2では「認知症を有する患者等」が31点、「その他の慢性疾患等を有する患者」が21点となります。
地域包括診療料についても同様の構成です。地域包括診療料1では「認知症を有する患者等」が1,682点、「その他の慢性疾患等を有する患者」が1,661点です。地域包括診療料2では「認知症を有する患者等」が1,614点、「その他の慢性疾患等を有する患者」が1,601点です。
この統合により、届出の簡素化が図られるとともに、認知症患者に対する手厚い評価は引き続き維持されます。なお、従来の認知症地域包括診療加算における多剤投薬の制限(1処方5種類超の内服薬や、向精神薬3種類超の投薬を受けていないこと)は、「認知症を有する患者等」の要件として引き継がれます。
3. 連携薬局の24時間対応要件の緩和
連携薬局の24時間対応要件について、一定の条件を満たす場合に緩和されます。
従来、地域包括診療加算等を算定する診療所が院外処方を行う場合、連携薬局は24時間対応できる体制を整えていることが必須でした。今回の改定では、当該保険医療機関において緊急時に処方が必要となる解熱鎮痛剤等の薬剤について、院内処方が可能な体制が整備されている場合に限り、連携薬局が24時間対応の体制を整備していなくてもよいものとされます。
この緩和は、地域包括診療料を算定する病院における院外処方の場合も同様です。病院では「24時間開局している薬局」との連携が求められていましたが、院内で解熱鎮痛剤等の緊急処方が可能な体制があれば、この要件が免除されます。
連携薬局の24時間対応要件は、地域包括診療加算等の届出における実務上のハードルのひとつでした。今回の緩和により、院内処方体制を持つ医療機関にとっては、届出のしやすさが向上すると考えられます。
4. 認知症患者の診断後支援に係る案内の明記
地域包括診療加算等において、担当医が認知症患者の診断後支援に係る取組について案内を行うことが望ましい旨が明記されます。
具体的には、診療を担当する医師が、地域包括支援センター・認知症地域支援推進員・若年性認知症支援コーディネーターと連携し、ピアサポート活動・本人ミーティング・一体的支援事業等の認知症患者の診断後支援に係る取組について、必要に応じて患者またはその家族に案内を行うことが望ましいとされます。
この規定は「望ましい」という努力義務的な位置づけですが、かかりつけ医が認知症患者の地域生活を支える役割をより明確にする趣旨があります。今後の改定で要件化される可能性もあるため、早めの対応が望まれます。
5. 薬剤適正使用連携加算の対象拡大
薬剤適正使用連携加算の対象が、入院・入所患者に加えて、外来で他院に通院している患者にも拡大されます。
従来の薬剤適正使用連携加算(30点)は、地域包括診療加算等を算定する患者が他の医療機関に入院または介護老人保健施設に入所した際、処方内容等の情報提供を行い、退院・退所後に薬剤の種類数が減少した場合に限って算定できました。今回の改定では、他の保険医療機関の外来において継続的に診療を受けている患者についても対象に追加されます。
外来患者が対象となる場合の算定要件は以下のとおりです。患者の同意を得て他の医療機関に処方内容・薬歴等を情報提供し、当該情報提供から3月以内に他の医療機関から処方内容の情報提供を受け、内服薬の種類数が減少していることが確認できれば、3月に1回算定できます。
薬剤適正使用連携加算は平成30年度に新設されましたが、これまでの算定実績は極めて少ない状況でした。今回の対象拡大は、外来通院中の患者に対するポリファーマシー対策を促進する意図があります。
なお、入院・入所患者に対する算定頻度も「退院日または退所日の属する月から起算して2月目までに1回」から「3月に1回」に変更されています。
6. 外来データ提出加算の新設と医療資源少ない地域の要件緩和
地域包括診療加算・料について、外来データ提出加算(10点)が新設されるとともに、医療資源の少ない地域における医師配置要件が緩和されます。
外来データ提出加算は、保険医療機関が診療報酬の請求状況および診療の内容に関するデータを継続して厚生労働省に提出している場合に、月1回10点を算定できるものです。施設基準として、外来患者に係る診療内容に関するデータを継続的かつ適切に提出するために必要な体制が整備されていることが求められます。この加算は、エビデンスに基づくかかりつけ医機能の評価を設計するうえでの基盤整備を目的としています。
医療資源の少ない地域における要件緩和については、医師配置に関する基準が見直されます。従来、地域包括診療加算1の施設基準において、「常勤換算2名以上の医師配置」が求められていましたが、「基本診療料の施設基準等」別表第六の二に掲げる地域(医療資源の少ない地域)に所在する診療所については、この基準が「常勤換算1.4人以上」に引き下げられます。この緩和は地域包括診療料についても同様です。
まとめ
令和8年度改定における地域包括診療加算等の見直しは、対象患者の拡大、認知症加算の統合、連携薬局要件の緩和、認知症診断後支援の明記、薬剤適正使用連携加算の拡大、外来データ提出加算の新設と医師配置要件の緩和の6点に整理されます。
特に実務上のインパクトが大きいのは、対象患者の拡大と認知症加算の統合です。慢性疾患1つ+要介護で算定可能になることで、算定対象の患者数が増える医療機関も多いと見込まれます。認知症加算の統合による届出の簡素化も、事務負担の軽減につながります。連携薬局の24時間対応要件の緩和や、医療資源の少ない地域における医師配置要件の緩和は、地域包括診療加算等の届出を新たに検討する医療機関にとっての追い風となるでしょう。届出状況や算定要件の確認を行い、改定への対応を早めに進めることをお勧めします。










