かかりつけ薬剤師制度は、特定の薬剤師が患者の服薬管理を一元的・継続的に担う仕組みである。この制度は、業務ノルマ化の指摘や本来の趣旨(患者によるかかりつけ薬剤師の選択)の浸透不足という課題を抱えてきた。本稿では、令和8年度診療報酬改定で行われるかかりつけ薬剤師の評価体系の抜本的見直しを解説する。
今回の改定では、かかりつけ薬剤師の評価体系を3つの観点から組み替える。第1に、かかりつけ薬剤師指導料(76点)及びかかりつけ薬剤師包括管理料(291点)を廃止する。第2に、服薬管理指導料の中にかかりつけ薬剤師区分を新設し、継続的フォローと患家訪問に対する2つの加算を創設する。第3に、かかりつけ薬剤師の施設基準について、薬剤師個人の要件を緩和する一方、薬局全体としての安定性を担保する要件を新設する。
1. かかりつけ薬剤師指導料及び包括管理料の廃止
令和8年度改定では、かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の2つの点数を廃止する。両点数は、特定の保険薬剤師が継続的・一元的に患者の服薬管理を行った場合の評価として設けられてきた。今回の廃止により、かかりつけ薬剤師の評価は服薬管理指導料の体系に一本化される。
かかりつけ薬剤師指導料は、現行で76点を算定する評価である。この点数は、患者またはその家族の同意を得て、特定の保険薬剤師(かかりつけ薬剤師)が必要な指導等を行った場合に、処方箋受付1回につき算定する仕組みであった。
かかりつけ薬剤師包括管理料は、現行で291点を算定する評価である。この点数は、地域包括診療加算等を算定する保険医療機関と連携した、包括的な薬学管理に対する評価として設定されていた。
なお、現行で認められている服薬管理指導料の特例(やむを得ない事情により他の保険薬剤師が連携対応した場合の59点算定)も、今回の改定で削除される。
2. 服薬管理指導料への統合と新加算の創設
廃止される指導料の機能は、服薬管理指導料の中に統合される。具体的には、服薬管理指導料の各区分にかかりつけ薬剤師区分(イ)を新設し、加えてかかりつけ薬剤師による継続的フォローと患家訪問に対する2つの加算を創設する。これにより、かかりつけ薬剤師の業務実態に即した評価が可能となる。
服薬管理指導料は、改定後にかかりつけ薬剤師か否かで区分される。再来患者(原則3月以内に再度処方箋を持参した患者)に対する区分1では、かかりつけ薬剤師が行った場合(イ)が45点、それ以外(ロ)も45点となる。新規患者等に対する区分2では、かかりつけ薬剤師が行った場合(イ)が59点、それ以外(ロ)も59点となる。点数自体は同額だが、かかりつけ薬剤師区分(イ)での算定は、後述する2つの加算を算定する前提となる。
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は、3月に1回50点を加算する新設項目である。この加算は、服薬管理指導料1のイまたは2のイ(かかりつけ薬剤師が行った場合)を算定している患者のうち、外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1・2、調剤管理料の調剤時残薬調整加算または薬学的有害事象等防止加算を算定した患者が対象となる。算定要件は、前回の調剤後から再度処方箋を持参するまでの間に、かかりつけ薬剤師が電話等で服薬状況や残薬状況を継続的に確認し、必要な指導を実施することである。なお、調剤後薬剤管理指導料や在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費のハ等を算定する患者は、本加算の対象外となる。
かかりつけ薬剤師訪問加算は、6月に1回230点を加算する新設項目である。この加算の対象も、服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定している患者に限られる。算定要件は、患者またはその家族の求めに応じて、かかりつけ薬剤師が患家を訪問し、残薬の整理や服用薬の管理方法の指導等を行い、その結果を保険医療機関に情報提供することである。なお、外来服薬支援料1や施設連携加算、在宅患者訪問薬剤管理指導料、服薬情報等提供料、居宅療養管理指導費のハ等を算定する患者は、本加算の対象外となる。
3. 施設基準の見直し
かかりつけ薬剤師に係る施設基準は、薬剤師個人の要件と薬局全体の要件に再構成される。具体的には、薬剤師個人の勤務時間及び在籍期間の要件を緩和する一方で、薬局としての勤務継続性を担保する要件を新たに設ける。この再構成により、短時間勤務や育児・介護休業との両立を図る薬剤師もかかりつけ業務に参画しやすくする狙いがある。
薬剤師個人の勤務時間要件は、週32時間以上から週31時間以上に緩和される。育児・介護休業法による所定労働時間短縮の場合は、週24時間以上かつ週4日以上の勤務で要件を満たす取り扱いが継続される。
薬剤師個人の在籍期間要件は、1年以上から6か月以上に短縮される。加えて、産前産後休業・育児休業・介護休業からの復職者については、休業前の在籍期間を合算できる規定が新設される。
薬局全体の要件は、今回新設される。具体的には、薬局の常勤保険薬剤師の平均在籍期間が1年以上であること、または薬局の管理薬剤師が継続して3年以上在籍していることのいずれかを満たす必要がある。患者との会話が他者に聞こえないパーテーション等による独立カウンターの設置(プライバシー配慮)も、引き続き求められる。
保険薬剤師として3年以上の保険薬局勤務経験、研修認定制度による研修認定の取得、医療に係る地域活動の取組への参画といった要件は、現行から維持される。
まとめ
令和8年度改定では、かかりつけ薬剤師の評価体系を本来の趣旨に立ち返る形で再構築する。再構築の柱は、指導料・包括管理料の廃止、服薬管理指導料への統合と新加算の創設、施設基準の個人要件緩和と薬局要件新設の3つである。保険薬局においては、新しい点数体系への算定準備とともに、薬局全体の在籍要件を見据えた人員体制の見直しが急務となる。










