令和8年8月26日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第655回)で、「妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会」の立ち上げが報告されました。この検討会は、出産に係る給付体系を見直す「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)」の成立を受けて設置されます。新たな給付体系で出産をどう評価するかは、分娩を取り扱う医療機関にとっても、妊産婦にとっても重要なテーマです。本メルマガでは、開催要綱をもとに、検討会の目的・検討事項・構成員・日程を解説します。
出産検討会は、新たな出産給付で診療・ケアをどう評価するかを設計するための論点整理の場です。検討事項は、診療・ケアの体制や内容、施設基準の着眼点、妊娠から産後にわたる支援体制の3つと「その他」です。構成員は、産科・小児科・助産・保険者・研究者など幅広い立場の15名です。日程は、10月初旬のキックオフから始まり、12月頃にとりまとめる案が示されています。
検討会が設置された目的
検討会の目的は、中医協などが出産の評価を議論する前に、現場の実情を分析して論点を整理することです。法改正によって出産に係る給付体系を新たに構築する必要が生じました。ただし、新しい評価を設計するには、現在の出産の実態を正確に把握しなければなりません。
評価の設計に先立ち、3つの実情を踏まえる必要がある
開催要綱は、評価を検討する際に踏まえるべき実情として次の3つを挙げています。
出産に係る診療・ケアの実情:分娩の現場でどのような診療やケアが提供されているか
妊娠から産後にわたる支援体制:出産の前後を通じてどのような支援が行われているか
自費と保険診療が併用されている現状:自費で行われる出産と、それに関連する保険診療がどう組み合わされているか
3つ目の実情は、現在の出産が自費と保険診療の併用で成り立っていることを示しています。この併用の中で、出産に関連する保険診療がどう行われているかを把握することが、新たな評価を設計する前提になります。
検討会は「提供体制」と「実施内容」に応じた評価の論点を整理する
これら3つの実情を分析したうえで、検討会は評価の設計に関する論点を整理します。開催要綱は、論点整理の対象を「提供体制や実施内容に応じた評価の設計」としています。なお、検討会の役割は論点整理です。具体的な評価のあり方は、中医協などで検討されます。
検討する4つの事項
検討会が扱う事項は、開催要綱で次の4つ(うち1つは「その他」)に定められています。(3)は、(1)と(2)に関連する支援体制を扱う位置づけです。
(1) 出産に係る診療・ケアの体制や内容等について
(2) 施設基準等の検討に必要な着眼点等について
(3) (1)(2)に関連する、妊娠から産後にわたる支援体制等について
(4) その他
(1)診療・ケアの体制や内容:何を評価の対象とするか
(1)は、出産の現場で提供される診療・ケアの体制や内容を整理する事項です。この整理が、新たな給付体系で何を評価するかを考える土台になります。
(2)施設基準の着眼点:どの施設をどう評価するか
(2)は、施設基準を検討するための着眼点を整理する事項です。施設基準とは、医療機関が特定の診療報酬を算定するために満たすべき人員や設備などの要件を指します。出産の評価に施設基準を設ける場合、どの要件に着目すべきかがここで検討されます。
(3)妊娠から産後にわたる支援体制:出産の前後をどう位置づけるか
(3)は、(1)と(2)に関連する妊娠期から産後までの支援体制を扱う事項です。出産の評価を、分娩の前後にわたる支援とのつながりの中で検討する視点が示されています。
構成員15名と運営体制
検討会の構成員は、医療提供者・保険者・自治体・研究者など多様な立場の15名です。出産の評価は、提供する側と費用を負担する側の双方に影響します。そのため、幅広い関係者の意見を反映できる構成になっています。
構成員を所属で分類すると6つのグループになる
15名の構成員を、本記事で所属ごとに分類すると次のとおりです(グループ内は50音順、敬称略)。
産科・小児・周産期の医療団体(4名)
石渡 勇(日本産婦人科医会 会長)
亀井 良政(日本産科婦人科学会 常任理事)
佐藤 好範(日本小児科医会 会長)
水野 克己(日本周産期・新生児医学会 理事長)
看護・助産の団体(2名)
片岡 弥恵子(日本看護協会 常任理事)
宮川 祐三子(日本助産師会 理事)
医師会・病院団体(2名)
島 弘志(日本病院会 副会長)
濵口 欣也(日本医師会 常任理事)
保険者・労働者(2名)
平山 春樹(日本労働組合総連合会 総合政策推進局 生活福祉局 局長)
米川 孝(健康保険組合連合会 副会長)
自治体・子育て支援(2名)
秋野 桂(青森県健康医療福祉部 部長)
奥山 千鶴子(NPO法人子育てひろば全国連絡協議会 理事)
研究者(3名)
岩村 正彦(東京大学名誉教授)
野口 晴子(早稲田大学教授)
山縣 然太朗(国立成育医療研究センター・成育こどもシンクタンク副所長)
運営は保険局が担い、議事は原則公開される
検討会は、厚生労働省の保険局長が構成員の参集を求めて開催します。庶務は保険局医療課が担当します。医政局地域医療計画課、保険局保険課、こども家庭庁成育局母子保健課もこれに協力します。議事は、会議で別に申し合わせた場合を除き、公開されます。必要に応じて、構成員以外の学識経験者や実務経験者の出席を求めることもできます。
12月頃とりまとめの検討スケジュール
検討会は月1〜2回程度開催し、12月頃にとりまとめる案が示されています。短期間で集中的に議論を進めるため、実態調査の結果を順次報告しながら検討する計画です。
10月から12月までの3段階で進める
スケジュール案は、次の3段階で構成されています。
10月初旬:キックオフ。これまでの議論や前提を確認
10月〜11月:検討事項(1)〜(3)を議論。実態調査の結果を順次報告
12月頃:とりまとめ
議論では研究事業や実態調査の結果を活用する
10月〜11月の議論では、実態調査の結果が順次報告される予定です。資料では、主な調査として次の2つが挙げられています(資料上は「等」とされています)。1つ目は、令和8年度厚生労働行政推進調査事業費補助金による「出産に係る妊産婦への総合的な支援並びに費用及び給付に関する研究」です。この研究の代表者は、構成員でもある野口晴子氏です。2つ目は、厚生労働省保険局医療課による「令和8年度分娩取扱施設における医療やサービスの実態調査」です。
まとめ:出産給付の評価設計に向けた論点整理が始まる
出産検討会は、法改正で新たに構築される出産の給付体系について、診療・ケアの評価を設計するための論点整理を行います。検討事項は、診療・ケアの体制や内容、施設基準の着眼点、妊娠から産後の支援体制の3つと「その他」です。構成員は、医療提供者・保険者・自治体・研究者など15名です。スケジュールは、10月初旬に始まり、12月頃にとりまとめる案です。整理された論点は、今後の中医協などでの検討で踏まえられます。分娩を取り扱う医療機関の方は、検討会の動向に注目しておきましょう。
※本記事は、令和8年8月26日 中医協総会(第655回)資料「総-3 妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会開催要綱」をもとに作成しています。スケジュールは同日時点の案です。










