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OTC類似薬の保険給付見直し|負担対象外となる9類型と実務を解説
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OTC類似薬の保険給付見直し|負担対象外となる9類型と実務を解説

77成分が対象の新制度。こども・がん・難病・長期使用など、負担を求めない範囲と医療機関・薬局の実務を整理

令和8年8月26日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第655回)で、厚生労働省はOTC類似薬の保険給付の見直しについて実施案を示しました。この見直しでは、OTC類似薬を処方された患者に薬剤費の4分の1を「特別の料金」として求めるため、医療機関と薬局は負担の有無を正しく判断する必要があります。本号では、中医協資料と技術的検討会の中間とりまとめをもとに、制度の仕組み、負担を求めない範囲、現場の実務を整理します。

OTC類似薬の見直しは、原則として負担を求めつつ、必要な受診を妨げないよう例外を細かく定めた制度です。第一に、対象はOTC医薬品と成分・投与経路・一日最大用量が同じ77成分で、令和9年3月の施行が想定されています。第二に、OTC医薬品にない効能・効果で使う場合と、こども・がん患者・生活保護受給者など9つの類型に当たる場合は、負担の対象外とする案が示されました。第三に、医療機関は外形的な基準と医師の確認で負担の有無を判断し、その結果をレセプトと処方箋に記載します。

1. 制度の仕組み:77成分に薬剤費の4分の1

一部保険外療養は、改正健康保険法で新設された「薬剤費の一部だけを保険給付から外す」療養です。対象となるのは77成分で、薬剤費の4分の1が保険給付から外れ、患者の負担になります。

一部保険外療養の根拠は、令和8年6月5日に公布された健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)です。 この改正法は、OTC医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養を「一部保険外療養」と定義しました。制度のねらいは2つあります。1つは、医療用医薬品の給付を受ける患者と、OTC医薬品を自費で購入する患者との公平性の確保です。もう1つは、現役世代を中心とする保険料負担の上昇の抑制です。施行は令和9年3月が想定されています。

対象医薬品は、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない77成分(1,042品目)です。 この77成分は、上記の条件で機械的に選ばれました。剤形が違うだけのものは、代替性が否定されないため対象に含まれます。一方、成分が完全に一致しない配合剤や、医療用医薬品のほうが一日最大用量が大きいものは対象外です。主な対応症状は、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌などです。なお、令和7年12月の公表時点の一覧からは、薬価削除によりポリエンホスファチジルコリンが外れ、OTC化によりラメルテオンが加わりました。

特別の料金は、対象薬剤の薬剤費の4分の1です。 患者は、この4分の1を全額自己負担します。残りの4分の3は保険給付の対象のまま残り、通常の負担割合(3割など)がかかります。つまり、薬剤費全体の3割に4分の1が上乗せされるわけではありません。特別の料金は、技術料(初診料や調剤基本料など)にはかかりません。また、特別の料金には別途消費税がかかります。3割負担の患者の場合、薬剤料のみの自己負担は次のように変わります。

  • 解熱鎮痛薬(5日分):45円 → 72円(参考:OTC医薬品 約500円)

  • 去痰薬(5日分):45円 → 72円(参考:OTC医薬品 約1,500円)

  • 便秘薬(30日分):360円 → 570円(参考:OTC医薬品 約2,000円)

  • 抗アレルギー薬(30日分):540円 → 855円(参考:OTC医薬品 約1,000円)

※厚生労働省資料のイメージ(3割負担)。医療用医薬品は例示薬のうち最もシェアの高いものの額、OTC医薬品は代替可能な製品のうちネット上で確認できた最安の額です。 ※医療用医薬品の場合、別途、初診料や調剤基本料などの技術料がかかります。 ※実際の負担額は、薬価や特別の料金への消費税により異なる場合があります。

2. 負担を求めない範囲:効能・効果と9つの類型

特別の料金を求めない範囲は、「薬を何の目的で使うか」と「どのような患者・療養か」の2つの軸で決まります。この範囲の大部分は、医学・薬学などの有識者15名による技術的検討会が4回の議論を経て、令和8年8月6日に中間とりまとめとして整理しました。ただし、「こども」と「低所得者」の範囲は、中医協で厚生労働省が新たに示した案です。いずれも現時点では案であり、確定したものではありません。

2-1. 効能・効果:OTC医薬品にない目的なら対象外

同じ成分でも、OTC医薬品で認められていない効能・効果を目的に処方する場合は、特別の料金の対象外です。 医療用医薬品とOTC医薬品は、同じ成分でも承認された効能・効果が異なる場合があります。そこで検討会は、成分ごとに両者の効能・効果の対応関係を一覧(中間とりまとめ別紙2)にまとめました。

効能・効果の対応関係は、「対応あり」2類型と「対応なし」1類型で判断します。 「対応あり」の1つ目は、OTC医薬品の効能・効果が、医師の診断した疾患名に直接対応する場合です。「対応あり」の2つ目は、OTC医薬品の効能・効果が、診断した疾患に通常伴う症状や使用目的に対応する場合です。「対応なし」は、医療用医薬品とOTC医薬品で使用目的が明らかに異なる場合です。「対応あり」の効能・効果で処方すれば、特別の料金の対象になります。

代表例のフェキソフェナジン塩酸塩とヘパリン類似物質では、疾患によって負担の有無が分かれます。

  • フェキソフェナジン塩酸塩(抗アレルギー薬)

    • 特別の料金の対象:アレルギー性鼻炎

    • 特別の料金の対象外:蕁麻疹、皮膚疾患に伴うそう痒

  • ヘパリン類似物質(皮膚保湿剤)

    • 特別の料金の対象:皮脂欠乏症、進行性指掌角皮症、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイド、外傷後の腫脹など

    • 特別の料金の対象外:血栓性静脈炎、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患、筋性斜頸(乳児期)

2-2. 患者・療養:9つの類型は対象外

特別の料金を求めない患者・療養は、本号では次の9つの類型に整理しました。 各類型で特別の料金の対象外となる範囲は、次のとおりです。

  1. こども:18歳年度末(18歳到達後最初の3月31日)までの者

  2. がん患者:がん治療中に、がんやその治療に関連して生じた状態への使用

  3. 難病患者:指定難病とそれに付随する傷病への使用

  4. 国の公費負担医療の対象者:当該公費負担医療を受ける際の使用

  5. 入院患者:入院中(退院時を含む)の処方

  6. 処置等に伴う処方:処置等と同日に新たに処方した14日分まで

  7. 長期使用が医療上必要な方:内服薬は概ね50週の通年使用、外用薬は一部のみ

  8. 妊婦・授乳婦等:OTC添付文書で「服用しないこと」とされ、有益性投与となる薬剤(例:イトプリド)

  9. 低所得者:生活保護受給者

各類型の詳しい要件と、特別の料金の対象になる場合は、以下で説明します。

①こどもは、18歳年度末までの者を対象外とする案です。 こどもは成長過程にあり、受診行動も大人とは異なります。また、多くの自治体がこども向けの助成で窓口負担を軽減しています。

②がん患者は、「がん治療中」に「がんやその治療に関連して生じた状態」へ使う場合が対象外です。 「がん治療中」とは、抗がん剤治療・放射線治療・ホルモン療法などを継続的に受けている状態を指します。具体的な治療計画が決まった治療開始前の患者も含まれます。「関連して生じた状態」には、抗がん剤の副作用による便秘・口内炎、好中球減少期の発熱、緩和ケアなどが当たります。一方、がん治療中でも花粉症・水虫・風邪・腰痛などへの処方は、特別の料金の対象です。治療終了後に長期の薬物投与が必要な場合は、⑦の長期使用の要件に当たれば対象外になります。

③難病患者は、指定難病と、それに付随して発生する傷病への使用が対象外です。 指定難病と無関係な傷病への処方は、特別の料金の対象です。指定難病であれば、難病法にもとづく助成を受けているかどうかは問いません。助成を受けていない患者は、指定難病の登録者証などで確認します。18歳から20歳までの小児慢性特定疾病の患者も同じ扱いです。

④国の公費負担医療の対象者は、その公費負担医療を受ける際の使用が対象外です。 国の公費負担医療には、障害者総合支援法の精神通院医療・更生医療・育成医療、感染症法の結核患者の医療、被爆者援護法の医療などがあります。一方、地方自治体が単独で行う公費負担医療は、実施内容にばらつきがあるため配慮の対象外です。

⑤入院患者は、入院中(退院時を含む)の処方が対象外です。 入院中の薬剤は、医師の管理下での集中的な治療の一環として使われるためです。

⑥処置等に伴う処方は、処置等と同日に新たに処方した14日分までが対象外です。 この扱いは、処置等の前から同一・類似の薬が投与されていない場合に限ります。処置等の前からあった症状への処方と、14日分を超える処方は、特別の料金の対象です。 対象となる処置等は、医科点数表の第3部「検査」のうち生検・穿刺など侵襲を伴う検査、第9部「処置」、第10部「手術」です。典型例は、抜歯後や創傷処理後の鎮痛剤です。14日分という上限は、NDBデータの分析にもとづきます。創傷処理と同日に処方されたロキソプロフェンは、89.3%が14日分相当(42錠)以内でした。

⑦長期使用が医療上必要な方は、内服薬と外用薬で基準が異なります。 内服薬(頓服薬を除く)は、年間処方日数が概ね50週であれば対象外です。過去の処方歴は、診療情報提供書、お薬手帳、オンライン資格確認の薬剤情報などで確認します。処方歴を確認できない場合は、原則として特別の料金の対象です。ただし、初診から少なくとも6か月間、症状の持続と継続的な使用を確認し、医師が通年使用(直近の実績を含め少なくとも50週)を必要と認めれば対象外になります。

外用薬の長期使用は、診療ガイドラインで通年使用の必要性が示されたものに限って対象外です。 経過措置ではない本来の取扱いとして対象外となるのは、アトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質と尿素の通年使用のみです。加えて、令和10年度末までの経過措置として、次の2つも対象外になります。1つは、これまで通年で使用しており、画像検査などで慢性かつ重度の疾患(例:変形性膝関節症のKL分類Grade4)と客観的に確認できる患者への鎮痛消炎剤の外用薬です。もう1つは、これまで通年で使用し、症状が十分に改善せず、免疫抑制剤などの全身療法を併用した治療歴がある患者への皮膚保湿剤・皮膚保護剤・角化症治療剤です。いずれも、医師が毎日の使用を指示して処方する場合に限ります。経過措置の終了までに、診療ガイドラインのエビデンスや処方実態を踏まえて見直しが行われます。ステロイド外用薬、抗真菌外用薬、消毒薬は、長期に使っても特別の料金の対象です。点眼薬は、通年性のアレルギー性結膜炎などで通年使用が確認できる場合に限り対象外です。

⑧妊婦・授乳婦等は、OTC添付文書の「服用しないこと」の趣旨によって扱いが分かれます。 検討会は、この記載を3つに分類しました。年齢・疾患・併用薬などを理由とする記載は、医師の判断を求める趣旨のため、特別の料金の対象です。部位・性別を理由とする記載は、効能・効果や9類型に当たるかで判断します。妊婦・授乳婦を理由とする記載は、医療用医薬品でも有益性投与が原則のため、特別の料金の対象外です。妊娠や授乳の有無は、問診票や母子健康手帳などで医師が確認します。

⑨低所得者は、生活保護受給者が対象外です。 制度全体として、負担を薬剤費の4分の1に抑え、通年使用が必要な患者を対象外としています。そのうえで、最低限度の生活と治療の継続への影響、窓口での確認負担を考慮し、生活保護受給者を対象外とする案が示されました。

3. 現場の実務と今後のスケジュール

特別の料金の有無は、処方する医療機関が判断し、薬局が徴収します。制度の詳細は、医療保険部会での議論を経て、令和8年秋頃に結論が出る予定です。

医療機関は、外形的な基準と医師の確認という2段階で負担の有無を判断します。 第1段階では、処方薬が77成分に当たるかと、患者が18歳年度末までの者または生活保護の医療扶助を受けているかを確認します。年齢や医療扶助は、マイナ保険証や医療券で把握できます。第2段階では、医師が診察を踏まえ、効能・効果の対応関係と9類型への該当を確認します。国は、判断基準や「OTC医薬品が対応していない効能・効果」の一覧を公表する予定です。

判断の結果は、レセプトと処方箋に記載します。 以下は、院外処方の場合の流れです。対象外と判断した場合は、その理由をレセプトに記載し、処方箋には対象外であることを記載します。対象と判断した場合は、処方箋に対象であることを記載します。レセプトへの理由の記載は、どの類型で対象外になったかを国が検証するために使われます。

薬局は、処方箋の記載にもとづき患者に説明し、特別の料金を受け取ります。 処方箋の記載に疑問があれば、必要に応じて疑義照会を行います。なお、制度の複雑化を避けるため、一部保険外療養に当たる場合は、長期収載品の選定療養の特別の料金は求めません。

今後は、医療保険部会での患者団体ヒアリングなどを経て、令和8年秋頃に結論を得る予定です。 中医協では、中間とりまとめを踏まえて負担を求めない範囲や手続をどう考えるかが論点として示されました。衆参両院の附帯決議は、配慮が必要な者への措置を将来にわたり維持することを求めています。また、附帯決議は、導入後の影響を検証し、可逆的な見直しを含めて対応することも求めています。中間とりまとめも、本結論は不変ではなく、処方シフトや受療行動の変化を検証して見直すと明記しています。

まとめ:原則負担・例外対象外の判断を押さえる

OTC類似薬の見直しは、77成分に原則として薬剤費の4分の1の負担を求め、必要な受診を守るために例外を定めた制度です。第一に、対象はOTC医薬品と成分・投与経路・一日最大用量が同じ77成分で、令和9年3月の施行が想定されています。第二に、OTC医薬品にない効能・効果での処方と、こども・がん患者・難病患者など9つの類型は、特別の料金の対象外とする案が示されました。第三に、医療機関は2段階で負担の有無を判断し、レセプトと処方箋に記載します。施行に向けて公表される判断基準や効能・効果の一覧を確認し、院内の運用とシステムの準備を進めましょう。

※本記事は、令和8年8月26日の中医協総会資料(総-2)と技術的検討会の中間とりまとめ(令和8年8月6日)にもとづいています。対象範囲などは今後の議論で変更される可能性があります。

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