岡大徳のメルマガ
岡大徳のポッドキャスト
心理支援加算の見直し|令和8年度改定で対象疾患拡大・280点へ
0:00
-6:11

心理支援加算の見直し|令和8年度改定で対象疾患拡大・280点へ

神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害まで対象を拡大。実施者要件と施設基準の新設まで4つの変更点を整理します。

令和8年度診療報酬改定で、通院・在宅精神療法の「心理支援加算」が見直されます。現行の心理支援加算は、外傷体験を有し心的外傷に起因する症状を有する患者だけを対象とするため、心理支援を必要とする多くの患者を評価できていません。実際、算定上の課題として「対象となる患者の基準に該当しないが、支援を必要としている患者がいる」と答えた病院は63.7%にのぼります。本稿は、この心理支援加算の見直しを4つの変更点に整理し、届出までに医療機関が準備すべき事項を示します。

今回の見直しは、対象患者の間口を広げると同時に、実施体制の質を担保する改定です。第一に、対象疾患を神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害に拡大します。第二に、実施者に係る要件を新設し、公認心理師に一定の勤務実績を求めます。第三に、施設基準を新設し、専任の常勤精神保健指定医の配置と地方厚生局長等への届出を求めます。第四に、評価を250点から280点に引き上げます。これら4つの変更を受けて、医療機関には対象患者の洗い出し、公認心理師の勤務実績の確認、届出の準備という3つの対応が求められます。

1. 対象疾患を神経症性障害等に拡大する

対象疾患の拡大は、今回の見直しの中心です。現行の心理支援加算は、対象患者を「外傷体験を有し、心的外傷に起因する症状を有する者」に限定しています。この限定により、対象患者はPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準に準じた範囲にとどまっていました。改定案は、この限定を外し、対象を神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害の患者に拡大します。中医協資料は、この3疾患群をICD-10のF40からF48に対応するものとして示しており、現行の対象患者もこの範囲に含まれます。

拡大の根拠は、算定実態の調査結果と支援効果の研究結果の2つです。算定実態については、算定を行っていない理由として「外来にて心理支援は実施しているが、算定対象となる患者はいないため」という回答が47.2%で最多でした。支援効果については、精神科外来に通院中の神経症性障害等(ICD-10のF40-F48)の患者に対し、通院精神療法に加えて公認心理師による心理支援を導入した研究があります。この研究では、心理支援を導入した群で患者の状態のさらなる改善が認められ、より効果的な通院精神療法の実施に寄与しました。

対象疾患の拡大に伴い、外傷体験に関する詳細な要件は削除されます。現行の留意事項通知は、医師に対して外傷体験の有無と内容の確認、外傷体験および心的外傷に起因する症状の詳細の診療録記載を求めています。改定案は、これらの記載要件を削除します。ただし、医師が心理支援を必要とされる理由等を診療録に記載する要件は残ります。

2. 実施者に係る要件を新設する

実施者に係る要件の新設は、対象拡大と対をなす質の担保策です。現行の心理支援加算は、実施者を「精神科を担当する医師の指示を受けた公認心理師」とだけ定め、経験や勤務形態を問いません。改定案は、この実施者に、精神科医療における勤務実績を新たに求めます。

新設される実施者要件は、精神科を標榜する保険医療機関における勤務経験です。改定案の文言は「精神科を標榜する保険医療機関(他の精神科を標榜する保険医療機関においても勤務する場合は、それらの勤務を合算する。)において、週1日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を1年以上行った経験のある公認心理師」です。週1日以上の常態勤務と週22時間以上の所定労働時間という2つの条件を同時に満たす勤務を、1年以上行った経験が求められます。複数の精神科標榜医療機関に勤務する場合は、それらの勤務を合算して判断できます。

なお、この勤務経験を「どの医療機関で積んだものまで認めるか」は、現時点の資料からは読み取れません。自院での勤務に限るのか、他の精神科標榜医療機関での勤務も含むのかによって、対象となる公認心理師の範囲は変わります。詳細な解釈は、今後発出される通知および疑義解釈で確認してください。

実施方法そのものに変更はありません。公認心理師が対面による心理支援を30分以上実施した場合に算定できる点は、現行どおりです。精神科を担当する医師が通院・在宅精神療法を実施した月の別日に当該支援を実施した場合も、引き続き算定できます。

3. 施設基準を新設し届出を必要とする

施設基準の新設は、算定手続きそのものを変える変更点です。現行の「一の一の六」は、通院・在宅精神療法の注9に規定する「別に厚生労働大臣が定める患者」、すなわち心的外傷に起因する症状を有する患者を定めた規定でした。改定案は、この規定を施設基準に置き換えます。

新設される施設基準は、精神保健指定医の配置1点です。具体的には、当該保険医療機関内に専任の常勤の精神保健指定医が1名以上配置されていることを求めます。この施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関でなければ、心理支援加算を算定できません。

届出が必要になる点は、実務上もっとも注意すべき変更です。現行の心理支援加算は、患者要件と実施要件を満たせば届出なしで算定できます。改定後は、届出を済ませるまで算定できません。届出の様式、提出時期および経過措置の有無は、今後発出される告示および通知で確認してください。

4. 評価を250点から280点に引き上げる

評価の引き上げは、要件の厳格化に見合う手当てです。現行の心理支援加算は250点です。改定案は、これを280点に引き上げます。引き上げ幅は30点で、率にすると12%の増となります。

算定回数の上限と期間に変更はありません。心理支援加算は、初回算定日の属する月から起算して2年を限度として、月2回に限り算定できます。この上限は改定後も維持されます。

5. 届出までに医療機関が準備すべき3つの対応

医療機関に求められる対応は、対象患者の洗い出し、公認心理師の勤務実績の確認、届出の準備の3つです。いずれも、改定内容の4つの変更点に対応します。

第一の対応は、対象患者の洗い出しです。現在は算定していないものの心理支援を実施している患者について、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害に該当するかを確認します。該当する患者が多いほど、今回の対象拡大の効果は大きくなります。

第二の対応は、公認心理師の勤務実績の確認です。心理支援を担当する公認心理師について、週1日以上の常態勤務と週22時間以上の所定労働時間を満たす勤務を1年以上行った経験があるかを確認します。複数の精神科標榜医療機関に勤務する公認心理師については、勤務時間の合算の記録をあらかじめ整理しておきます。

第三の対応は、届出の準備です。専任の常勤精神保健指定医が1名以上配置されているかを確認し、配置がなければ体制の見直しを検討します。配置が確認できたら、告示および通知の発出を待って速やかに届け出ます。

まとめ

令和8年度診療報酬改定は、心理支援加算を4点にわたって見直します。対象疾患は神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害に拡大されます。実施者には、精神科標榜医療機関において週1日以上常態として勤務し、かつ所定労働時間が週22時間以上である勤務を、1年以上行った経験が求められます。施設基準には、専任の常勤精神保健指定医1名以上の配置が新設され、届出が必要になります。評価は250点から280点に引き上げられます。心理支援を実施している医療機関は、対象患者の洗い出し、公認心理師の勤務実績の確認、届出の準備という3つの対応を早期に進めてください。

このエピソードについてのディスカッション

Userのアバター

もっと続けますか?