令和8年度診療報酬改定の個別改定項目のうち、「Ⅱ-1-1 患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた、医療提供体制の整備」に該当する⑬~⑮の3項目を取り上げます。これらはいずれも、入院医療における看護体制の強化、高額薬剤への対応、包括払い制度の精緻化を目的とした見直しです。本稿では、各項目の改定内容を概説し、詳細記事へのリンクを掲載します。
今回取り上げる3項目の概要は次のとおりです。⑬「障害者施設等入院基本料における看護補助者に係る加算の見直し」では、看護補助加算と看護補助体制充実加算の算定可能期間が入院31日目以降に拡大されます。⑭「入院料に包括されない除外薬剤・注射薬の範囲の見直し」では、生物学的製剤・JAK阻害薬の追加と別表の一本化が行われます。⑮「DPC/PDPSの見直し」では、DPC標準病院群の細分化や機能評価係数Ⅱの変更など5つのポイントが見直されます。
⑬ 障害者施設等入院基本料における看護補助者に係る加算の見直し
障害者施設等入院基本料(7対1・10対1)の看護補助加算と看護補助体制充実加算に、入院31日目以降の新たな点数区分が新設されます。この見直しは、看護職員と看護補助者の業務分担・協働の推進、および夜間の看護業務の負担軽減を目的としています。
看護補助加算には、入院31日目以降に算定できる「ハ イ及びロ以外」(50点)が追加されます。従来は入院14日以内(146点)と入院15日以上30日以内(121点)の2区分のみでしたが、3区分に拡充されます。
看護補助体制充実加算にも同様に、入院31日目以降の新区分が追加されます。新区分の点数は、加算1が60点、加算2が55点、加算3が51点です。身体的拘束を実施した日は加算3の点数で算定するルールは従来どおり維持されます。
これらの変更により、長期入院患者への看護補助体制が診療報酬上で評価される仕組みが整います。届出を行っている医療機関は、算定可能期間の延長による収益への影響を確認しておくことが重要です。
詳細記事:【令和8年度改定】障害者施設等入院基本料の看護補助加算が拡充|算定期間の延長と点数を解説
⑭ 入院料に包括されない除外薬剤・注射薬の範囲の見直し
入院料に薬剤料が包括される病棟における除外薬剤・注射薬の範囲が大幅に見直されます。この見直しの背景には、生物学的製剤やJAK阻害薬など高額薬剤を使用する患者の増加に伴い、包括払い病棟での受入れが困難になっている現状があります。
今回の改定では、主に7つのポイントが変更されます。第一に、回復期リハビリテーション病棟入院料等の除外薬剤に抗悪性腫瘍剤・医療用麻薬・腎性貧血治療薬が追加されます。第二に、精神病棟の特定入院料にも同じ3種類の薬剤が追加されます。第三に、各入院料に共通する除外薬剤として生物学的製剤とJAK阻害薬が新たに加わります。
このほか、血友病の医薬品の対象が類縁疾患まで拡大されること、複数の別表が一つに統合されること、介護老人保健施設の算定範囲が整理されること、コロナ抗ウイルス剤の経過措置が令和8年5月31日で終了することが定められています。
これらの見直しにより、高額薬剤を使用する患者の円滑な入棟が促進され、病棟間の不合理な格差が解消されることが期待されます。
詳細記事:【令和8年度改定】除外薬剤の範囲拡大と別表統一|生物学的製剤・JAK阻害薬が新たに追加
⑮ DPC/PDPSの見直し
DPC/PDPSについて、医療の標準化・効率化を更に推進する観点から、医療機関別係数、診断群分類、算定ルールの3つの領域にわたる見直しが行われます。主な見直しポイントは5つです。
第一のポイントは、DPC標準病院群の細分化です。救急搬送の受入実績等に基づき、「標準病院群1」と「標準病院群2」に区分されます。標準病院群1に該当するには、救急車搬送入院患者数が年間700人以上であることなど、4つの要件のいずれかを満たす必要があります。
第二のポイントは、機能評価係数Ⅱのうち複雑性係数の変更です。従来は「1入院当たりの包括範囲出来高点数」で評価していましたが、各診断群分類の在院日数25%tile値までの平均包括範囲出来高点数により評価する方式に変更されます。この変更により、入院初期の医療資源投入の密度がより適切に反映されます。
第三のポイントは、地域医療係数の見直しです。定量評価指数では、DPC標準病院群に限り、がん・脳卒中・心筋梗塞等の心血管疾患・周産期の4領域に着目した評価が導入されます。体制評価指数では、認定ドナーコーディネーターの院内配置と地域の需要変動への応答性の2項目が新設されます。
第四のポイントは、入院期間Ⅱの基準変更です。在院日数の変動係数が0.6を下回る診断群分類では、平均在院日数から中央値に移行します。ただし、移行に伴う急激な変化を防ぐため、変動率の上限は10%に設定されています。
第五のポイントは、再転棟時の算定ルールの厳格化です。DPC算定病棟から非DPC算定病棟へ転棟した後に再びDPC算定病棟に戻る場合、従来は転棟後7日以内に限り一連の入院とされていましたが、この期間制限が撤廃されます。
このほか、激変緩和係数は従前の考え方が維持され、退院患者調査の調査項目の見直しも行われます。各医療機関は、自院がどの病院群に分類されるかの確認とともに、新たな係数設定への対応を早期に進めることが重要です。
詳細記事:【令和8年度改定】DPC/PDPSの5つの見直しポイントを徹底解説
まとめ
令和8年度診療報酬改定の個別改定項目⑬~⑮では、入院医療の評価に関する3つの見直しが行われます。⑬では障害者施設等入院基本料の看護補助加算・看護補助体制充実加算に入院31日目以降の新区分が新設され、長期入院患者への評価が拡充されます。⑭では除外薬剤の範囲が拡大され、生物学的製剤・JAK阻害薬が全入院料共通で追加されるとともに別表が一本化されます。⑮ではDPC標準病院群の細分化、機能評価係数Ⅱの変更、入院期間Ⅱの中央値移行など5つのポイントが見直されます。これらの改定は、看護体制の強化、高額薬剤を使用する患者の円滑な入棟、包括払い制度の精緻化を通じて、入院医療の質と効率の向上を目指すものです。










