令和6年度に条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品2品目が、通常承認を得られずに薬価基準又は材料価格基準から削除されました。この事態を受け、中央社会保険医療協議会(中医協)は、条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品の保険適用上の償還価格算定方法を見直しました。本稿では、令和8年1月14日の中医協総会(第641回)で報告された新方針の内容を解説します。
今回の見直しでは、条件及び期限付き承認という制度の特性を踏まえた対応が明確化されました。薬価又は材料価格算定時については、原価計算方式の営業利益率の係数を0.5倍とし、有用性系加算は算定時に判断しないこととなりました。収載後の対応については、費用対効果評価を本承認後に判断することとなりました。改めて承認を受けた際の対応については、補正加算の適用や費用対効果評価の該当性を改めて検討することとなりました。
見直しの背景
条件及び期限付き承認とは、再生医療等製品の特性を踏まえ、有効性が「推定」され安全性が「確認」された段階で、条件や期限を付して承認する制度です。この制度により、患者は新たな治療へ早期にアクセスできます。
この制度の下で保険適用された製品に、想定外の事態が発生しました。令和6年度に、コラテジェンとハートシートの2品目が通常承認を得られず、薬価基準又は材料価格基準から削除されたのです。
この事態を受け、中医協の合同部会(費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会)が償還価格の算定方法を検討しました。検討の前提として、条件及び期限付き承認時における有効性の推定と安全性の確認が適切に実施されること、及び承認後の計画が合理的かつ実施可能であることが置かれています。
薬価又は材料価格算定時の対応
新方針では、薬価又は材料価格算定時の対応として5つの項目が定められました。計算方式、営業利益率の係数、有用性系加算、その他の補正加算、外国平均価格調整の5項目です。
計算方式については、通常承認を受けた製品と同様のルールが適用されます。薬価算定では類似薬効比較方式、材料価格算定では類似機能区分比較方式が原則となります。類似薬又は類似機能区分が存在しない場合は、原価計算方式により算定されます。
営業利益率の係数については、条件及び期限付き承認の特性を反映した対応がとられます。原価計算方式により算定される場合、営業利益率の係数は平均的な営業利益率に0.5を乗じた値を用います。この措置は、有効性が「確認」ではなく「推定」にとどまることを踏まえたものです。
有用性系加算(画期性加算、有用性加算、改良加算)については、算定時には該当性を判断しません。有効性が「確認」ではなく「推定」されたことをもって承認が付与されたことが、その理由です。これらの加算の適用は、改めて通常承認を受けた後に検討されます。
その他の補正加算については、算定時に該当性を判断します。市場規模が小さいが医療上の必要性が高い医薬品の評価や、革新的な新薬の日本への早期導入の評価によるイノベーション推進という趣旨を踏まえた対応です。有効性が「推定」であることを考慮しつつも、加算の趣旨に照らして判断されます。
外国平均価格調整については、要件に該当する場合は適用されます。この対応は、通常承認を受けた製品と同様です。
薬価又は材料価格収載後の対応
収載後の対応として、市場拡大再算定、費用対効果評価、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の3つが定められました。
市場拡大再算定については、通常承認を受けた製品と同様に取り扱われます。条件及び期限付き承認であることによる特別な扱いはありません。適用する場合は、薬価算定組織又は保険医療材料等専門組織での審議を経て、中医協総会で了承されます。
費用対効果評価については、改めて承認を受けた際にその該当性を判断することとなりました。条件及び期限付き承認の段階では、有効性が「推定」にとどまるため、分析に必要なデータが不十分であることが想定されるためです。本承認後に、必要なデータが揃った段階で評価の該当性が判断されます。
新薬創出・適応外薬解消等促進加算(革新的新薬薬価維持制度)については、要件に該当する場合は適用されます。この加算は、革新的な新薬の研究開発を促進し、日本への早期導入を図るための制度です。条件及び期限付き承認であっても、要件を満たせば適用対象となります。
改めて承認を受けた際の取り扱い
条件及び期限付き承認を受けた製品が、期限内に改めて承認申請を行い通常承認を取得した場合、保険上の取り扱いが再検討されます。この再検討は、薬価算定組織又は保険医療材料等専門組織での審議を経て、中医協総会で了承されます。
再検討の対象は3つあります。1つ目は、原価計算方式で算定された場合の営業利益率の係数です。2つ目は、補正加算の適用又は控除です。3つ目は、費用対効果評価の該当性です。これらについて、通常承認に係る審査の結果等を踏まえて検討されます。
補正加算率の計算方法については、新規収載品目に対する補正加算率の算式と同様のルールが適用されます。算定時に判断しなかった有用性系加算についても、この段階で適用の可否が検討されます。
まとめ
今回の見直しは、条件及び期限付き承認という制度の特性を保険適用上の取り扱いに反映させるものです。有効性が「推定」にとどまる段階では、営業利益率の係数を0.5倍とし、有用性系加算は判断を保留します。本承認後に改めて、これらの項目や費用対効果評価の該当性が検討されます。
中医協は、この取り扱いについて継続的な見直しを予定しています。条件及び期限付き承認を受けた製品の事例が集積するなど、状況の変化があった場合には、中医協総会に報告し、必要に応じて見直しが審議されます。再生医療等製品の保険適用は、国民皆保険の堅持とイノベーションの推進、患者への治療アクセス確保のバランスの中で、今後も検討が続けられます。










