令和8年度診療報酬改定では、個別改定項目「Ⅱ-2 『治し、支える医療』の実現」として、3分野・計11項目の見直しが行われます。2040年頃を見据え、高齢者の救急増加や医療・介護の複合ニーズに対応するため、入院前から退院後までを一貫して支える医療提供体制の構築が、この見直しの目的です。
3分野の見直しの概要は次のとおりです。第1の分野「在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援」(Ⅱ-2-1)では、カンファレンス頻度の大幅緩和、包括期充実体制加算(80点)の新設、地域包括ケア病棟の初期加算見直しの3項目が盛り込まれます。第2の分野「円滑な入退院の実現」(Ⅱ-2-2)では、入退院支援加算等の7つの見直し、介護支援等連携指導料の再編、高次脳機能障害者の退院支援体制の新要件化、専従要件の緩和の4項目が実施されます。第3の分野「リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進」(Ⅱ-2-3)では、リハ栄養口腔連携体制加算の2段階再編、摂食嚥下機能回復体制加算の要件緩和、口腔管理連携加算(600点)の新設、医科連携訪問加算(500点)の新設の4項目が含まれます。
Ⅱ-2-1 在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援を担う医療機関の評価
在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援(緊急入院等)を担う医療機関の評価は、3項目で構成されます。高齢者救急の増加と地域包括ケアシステムの推進を背景に、協力医療機関や包括期病棟が後方支援を担う体制と実績をより適切に評価することが、この見直しの趣旨です。
① カンファレンス頻度の大幅緩和では、協力医療機関と介護保険施設等が行うカンファレンスの頻度要件が緩和されます。ICTによる情報共有を行う場合は年3回以上から年1回以上に、ICTを行わない場合は月1回以上から原則年3回以上に変更されます。さらに、一定の実績(年2件以上の入院受入れまたは往診)がある場合は年1回以上で足ります。入退院支援加算1における連携機関とのカンファレンスと兼ねることも認められます。
② 包括期充実体制加算(80点)の新設では、200床未満の中小病院が地域包括医療病棟または地域包括ケア病棟で後方支援を担う体制と実績が新たに評価されます。加算は1日80点で入院日から14日間が限度です。急性期病院一般入院料・急性期一般入院基本料(A100)の病棟を持たない200床未満の病院が対象となります。
③ 地域包括ケア病棟の初期加算等の見直しでは、在宅患者支援病床初期加算の対象患者の拡大、点数のメリハリ化、包括範囲の見直しが行われます。対象が「救急搬送された患者」から「緊急入院した患者」に拡大され、緊急入院した患者の点数は引き上げ、それ以外は引き下げとなります。退院時共同指導料2と介護支援等連携指導料は包括範囲から除外され、別途算定が可能になります。
👉 詳しくはこちら:【令和8年度改定】後方支援の評価が3つ変わる|カンファ緩和・新加算・初期加算見直し
Ⅱ-2-2 円滑な入退院の実現
円滑な入退院の実現に向けた見直しは、4項目で構成されます。①~③は「関係機関との連携強化」「入院前からの支援」「生活に配慮した支援」を軸とした見直しであり、④は「専門人材の柔軟な活用」による入退院支援体制の底上げを図る見直しです。
① 入退院支援加算等の見直しでは、7つのポイントで入退院支援が多面的に強化されます。地域包括医療病棟等における入退院支援加算1の新点数(1,000点)の新設が主な変更点です。そのほか、地域連携診療計画加算への検査・画像情報提供加算(200点)の新設、介護保険施設等への誘導による金品収受の禁止、退院困難な要因の拡大、面会を妨げない規定の新設、専従職員の兼務の明記、医療保護入院等診療料への多職種退院支援の評価(400点)の新設が盛り込まれます。
② 介護支援等連携指導料の見直しでは、従来の400点が「指導料1」に位置づけられ、平時からの連携を評価する「指導料2」(500点)が新設されます。指導料2は入退院支援加算1の届出病棟に限定され、入退院支援部門の担当者が平時から連携体制を構築している介護支援専門員等と共同して指導を行った場合に算定できます。
③ 回復期リハ病棟における高次脳機能障害者の退院支援の推進では、施設基準に3つの体制要件が追加されます。高次脳機能障害者支援センター等の情報把握、退院時の患者・家族への説明・提供、リハビリテーション継続先への文書提供体制の整備です。
④ 感染対策向上加算等における専従要件の見直しでは、3つの柱で専門人材の柔軟な活用が実現されます。介護保険施設等への助言時間の上限が月10時間から月16時間に拡大され、専従者の月16時間までの他業務従事が容認され、入院栄養管理体制加算の専従管理栄養士の業務範囲が拡大されます。
👉 詳しくはこちら:【令和8年度改定まとめ】円滑な入退院の実現に向けた4項目の見直しポイントを徹底整理
Ⅱ-2-3 リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進
リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の見直しは、4項目で構成されます。いずれも、急性期から包括期にわたる入院患者のADL維持・向上と口腔管理の充実を目指すものです。
① リハ栄養口腔連携体制加算の2段階再編では、現行の加算(120点)が加算1(150点)と加算2(90点)に再編されます。加算2では土日祝日のリハ提供量基準が「平日の8割以上」から「7割以上」に、ADL低下割合基準が「3%未満」から「5%未満」に緩和されます。地域包括ケア病棟にもリハ栄養口腔連携加算(30点)が新設されます。
② 摂食嚥下機能回復体制加算と経腸栄養管理加算の見直しでは、3つの変更が行われます。言語聴覚士の配置要件が「専従」から「専任」に緩和されます。加算3の実績要件に経腸栄養から経口摂取へ回復した患者が算入可能になります。経腸栄養管理加算の対象患者が、入院前からの中心静脈栄養管理患者や経口摂取不可で経腸栄養を選択した患者にも拡大されます。
③ 口腔管理連携加算(600点)の新設では、歯科診療を行わない病院が歯科医療機関と連携して入院患者の歯科診療を実現するための仕組みが設けられます。歯科医療機関との連携体制の構築、患者の同意を得た文書による紹介、入院中の歯科診療の実施という3つの要件を満たすことで算定できます。
④ 医科連携訪問加算(500点)の新設では、歯科側の新たな評価が設けられます。歯科診療を行っていない医療機関からの依頼に基づき、連携する歯科医療機関が入院患者に歯科訪問診療を行った場合に算定できます。口腔管理連携加算が医科側の評価であるのに対し、この加算は歯科側の評価として対をなすものです。
👉 詳しくはこちら:【令和8年度改定まとめ】リハ・栄養・口腔管理の4つの見直しを一挙解説
まとめ
令和8年度診療報酬改定における「治し、支える医療」の実現は、3分野・計11項目で構成されます。後方支援の分野では、カンファレンス頻度の緩和と新加算の創設により、中小病院を含めた後方支援体制の底上げが図られます。円滑な入退院の分野では、入退院支援加算の拡充・介護支援等連携指導料の再編・退院支援体制の新要件化・専従要件の緩和により、入院前から退院後まで切れ目のない支援が推進されます。リハ栄養口腔管理の分野では、加算の再編と要件緩和に加え、口腔管理連携加算(600点)と医科連携訪問加算(500点)の新設により、多職種・多施設の連携による高齢者ケアの充実が図られます。これら3分野に共通するのは、届出・算定のハードルを下げつつ、連携と実績に基づく評価を強化するという方向性です。各医療機関は、自院が該当する項目の施設基準と算定要件を確認し、届出準備を計画的に進めてください。










